※この記事にはHollow knightのネタバレがあります。
私は廃墟は好きではない。
かつて栄えていた風景を想像しながら、今静かになってしまった廃墟を歩くツアーにも魅力を感じない。
私が住む日本でも、かつては島で良質な石炭が掘れるとのことで、石油エネルギーに切り替わるまで栄えた軍艦島がある。
テレビやワイドショー、漫画でも時折話題になったこともあるが、実際に体験していない手前、あまり行きたいと思わなかった。
しかし、そんな廃墟に主体的に訪れ、かつては栄えた王国の跡地を廻る主人公。
アンビエントな音楽と共に悲壮感を漂わせつつ、この王国に一体何が起こったのかを一緒に想像する。
廃墟に興味無かった者を、廃墟って実は魅力に溢れる場所なのかもしれないという、
体験を味あわせてくれるのがこの「Hollow Knight」という2D探索型アクションゲームである。
目次
建造物が軒並み崩れ落ちた世界
『そして目撃者となるのだ。最後にして唯ひとつの文明、永遠なる王国、”ハロウネスト”の。』
廃墟というからには、かつての歴史がこんこんと語られるかと思えば、オープニングで謎のオレンジの液体のようなスライムが閉じ込められる描写と、
真っ黒な瞳で村を高い所から見つめる主人公。
操作説明もほとんどなく、とにかく始めていく様はなんとなく「Undertale」を思い出す。
Howdy!といきなりあの憎き花が世界について熱弁してくれるわけでもなく、抽象的な説明が描かれた像が情報を教えてくれる、
この先にハロウネストと呼ばれる永遠の王国があること。確かな法律(決まりごと)が存在することにある。
最も事前情報が無ければ、この世界はまだ人で満ち溢れているのではないかという錯覚すら引き起こす
これらの情報を打ち砕くかのような、朽ちゆく集落「ダートマウス」にたどり着く。
老いたムシすらも知らない、謎の王国ハロウネスト
『宝や秘密にあふれ、史上もっとも偉大な王国だともいわれていた。』
謎のオープニングと、不親切な像のメッセージを置いておきつつ、最初にダートマウスで出会うのがこの老いたムシである。
彼は第一村人であるものの、彼はもう私しか住んでいないと話す。
そして恐らく長らく住んでいるであろうこのムシであっても、この地の地下にある永遠の王国ハロウネストについては、噂でしか知らないという。
巨大な建造物や文明、町並みの跡があったにも関わらず、寂れてしまうなど一体何があったのか、
この時点で既に頭の中では様々な想像が掻き立てられていた。
これこそが、廃墟に対して、今は過ぎ去ってしまった光景を夢想する楽しさというのだろうか。
同好の士が書き記す地図に救われる
物静かな音楽とともに、攻撃をすればオレンジの物体を吐き出す虫たちに疑問に思いつつ、綺麗な廃墟を降りていく。
すると、後々大分役に立つ「マップ」アイテムをくれるコーニファーと出会う。
彼は探索することに対する美学を話し、ワタシもキミも、この場所を探索することを幸せ者だと話す。
私は感化されるのが早いため、既に彼自身を同好の士とすら考える。
後々彼が書く「マップ」と、彼の妻から購入出来る「コンパス」に、これから始まる探索に幾度となく助けられたかと思うほどだった。
インディーズながらも、それほどまでにボリュームの高い作品について、今度はストーリーではなくゲーム性を書き記していく。
メトロイドヴァニア系かつ、トライ・アンド・エラーなダークソウルを組み合わせた作品
とはいえ筆者はダークソウルをプレイしたことはないが、要するにこれは死にゲーである。
確かに主人公はライフが増えたり、バッヂや能力等で強化はしていくが、根本的には敵の攻撃に当たってはいけないのは変わらない。
回復手段はあるものの隙だらけであり、回復している間も敵は攻撃を休めることはない。
対策は、何度倒れてもいいから敵の動きを見て覚えることにある。
最初のボスどころか、道中に出てくるやや強い敵に苦戦するようでは、最初のボスにすら勝つことは出来ない程、それなりの難易度と操作性がこのゲームにはある。
ただトライ・アンド・エラーをしていき、徐々にプレイヤー自身のスキルが高くなっていく毎に、爽快感が増していくのが非常に楽しい。
昨今では、チュートリアルが当たり前のようにあり、スマートフォンのような高い操作性の必要が殆どないゲームが溢れている。
もちろんそれも時代の流れであり、私自身も時折プレイするため否定しているわけではないが、
実際に成長しているという感覚が、ゲームをしっかりやっているという達成感に繋がると個人的には思う。
またメトロイドヴァニア2Dで、広大なマップを探索しながら、行き詰まって回り道をしたりアイテムを拾って自身を強化し、それのおかげで次の道へ進める…。
スマブラでお馴染みのサムスが主人公のメトロイドと、Switchでスマブラに出演したシモン・ベルモンドが主人公の悪魔城シリーズ(キャッスルヴァニア)系のゲームをメトロイドヴァニアというが、
本作はまさにその流れを踏襲したゲームだろう。
先程地図の話をしたが、基本的に大まかにしか書かれていない。残りは自らが足を動かし、探索していく必要がある。
そこには、思いも寄らない物があったり、王国の歴史の片鱗があったり、隠れて住む者が居たりと様々だ。
そうやって未知の世界や廃墟に足を踏み入れていく感覚は、メトロイドヴァニア系、探索系ならではと言える。
真相は深層にある
隅々を探索し、王国の残り香をたどることが本作の目標であるかと言えばそうでもない。
そもそもだが、プレイヤーが操るこの主人公自身が話さない、喋らないものだから一体何を目的にこの地に訪れ、この廃墟となった広大な王国を探索しているのかが分からない。
プレイヤーは彼を操作しつつも、彼自身が一体何を目的としているのかを知る必要性があるとプレイしていく上で感じていくことになる。
私は3周程プレイしているが、一体この時に何を思っていたのか、何度もプレイする度に思い馳せてしまう。
狂気に満ちた王国であり、危険が常に隣にある世界だが、それでも尚突き動かす彼の精神にも着目してもらいたいと思う。
移植が多数で、どのゲーム機でも楽しめる。
本作はインディーズであるものの、上にもチラリと話した「Undertale」同様、ファンは大勢居る。
そのため、本来はPC版のみであった作品が、SwitchやPS4、XboxOneで発売されている。
PC版【Steam版】
NintendoSwitch【DL版】
PS4版【特典アイテム付き版】
廃墟が好き、メトロイドヴァニア系が好きという方には当然オススメ出来るものの、虫の描写もあるため、
虫が本当に嫌いという方にはあまりオススメ出来ないので要注意だ。
以上です。お疲れさまでした。
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