※出来る限りネタバレは排除しようとしています。
目次
ゲームの概要
Hempuli Oyによって開発された「Baba Is You」はルール自体を接触可能なブロックとして配置し、パズルのように変えることでルール自体を変えてしまう倉庫番型パズルゲームである。
インディーズながらも意欲作であり、かなりの話題作となっている。
本稿ではこの記事が何故意欲作なのかをレビューしていく。
[the_ad id=”1221″]倉庫番、定番のロジックパズルへの新風
倉庫番はパズルゲームにおける定番の一つだ。
四方を囲まれた狭い倉庫の中で、乱雑に置かれた箱を所定の位置まで押すと勝利する
という単純なゲームだが面が進むにつれて、荷物を一度大回りさせたり、位置関係を何度も変えたりしないと所定の位置に置けないなど、
単純なように見えて意外と頭を使うゲームであり、「Baba Is You」もまた基本的には倉庫番ゲームである。
ただし倉庫番というゲームは、基本的なシステムは簡単なためプログラミング初心者でも作れるゲームの一つとして紹介されており、
「倉庫番」と検索するだけで山のようにフリーゲームがヒットする。
無料でプレイ出来る倉庫番が多数ある中、この「Baba Is You」は大体1500円程度するため、
倉庫番というゲームからすればやや高めの値段設定と言えるだろう。無料で遊べるゲームを1500円もかけて遊ぶ必要は個人的には無い。
しかし「Baba Is You」は倉庫番どころか、昨今のゲームに無かった「条件を入れ替える」パズルゲームだったことが人気になった理由なのだと思う。
「Baba=白い動物」「Is=です」「You=あなた」→ Baba Is You=このBabaと呼ばれる白い動物は あなた です
倉庫番における主人公はYouである。しかしそれは別に「Baba」で無くても良い。「Rock」「Keke」「Wall」「Flower」……全てに「Is You」がつくならそれがあなたが動かす主人公になる。
同時に「Flag Is Win」→フラッグを取れば勝ちという条件すらも崩すことが出来る。それが別にRock Is WinでもWall Is Winでもいい。
さらに言えばBaba Is YouとBaba Is Winが同時に条件にあれば、その時点でゲームクリアとなる。
このゲーム自体は倉庫番型パズルゲームだが、勝利条件は変化することを忘れては行けない。
○○ Is Winの条件付けにし、その○○に触れる必要があるというのが特徴だ。
私達は崩れた、制限付けられた条件を書き換え、私達に有利に働くようにして勝ちを獲得しなければいけない。
閃きの快感を支配するゲームは名作
推理もののアニメやゲーム…例えば名探偵コナン、例えば相棒、彼らは一見完全犯罪だったり自殺としか考えられない事件に対し、
現場に遺された多少の違和感や証拠から「実はこういう事だったんじゃないか!?」という閃きで事件を解決へと導く。
その瞬間、推理を担当したコナン君や右京さんは微笑むわけだ。「こういうことか!」と。
その閃きは、人に一種の快感をもたらしてくれる。
閃き力という言葉があるが、これは直感とは違う。
一つの事に極限に集中し、様々な前提条件を考慮し、幾多にも組み合わせた知識が閃きに導いてくれる=正解へと導く力を言う。
この力を養うことは、人に豊かなアイデアを創造させることが出来るし、集中力を養うことも出来る。
人は脳を使うべきだ。我々はこの知能でこれまで発展してきたし、今後もそうあり続けるべきだ。
さて、推理物のゲームは、論理を組み立てつつプレイヤーに前述した閃きを体験させるのが宿命だと私は思っている。
「逆転裁判」では、発想を転換、逆転させるということを目標としているし、脱出型ゲームも推理や閃きを大事にしている。
「Baba is You」でも条件付け上ではおおよそ不可能とも言えそうな状況でも、発想を転換させたり一種の閃きでクリアまでこぎつけた途端に、脳内でドーパミンが溢れ出す快感を感じるだろう。
そもそもWall Is Stop…壁は通れないものだと思っていたのに、実は条件付けされていなければそれが通れるのだ。
常に条件付けを考慮しつつ考えるため、脳内に常に刺激を加えてくれる作品であり、一種の閃きまで支配するこの作品は名作と呼ぶに相応しいだろう。
難易度が上がるに連れ、条件付けが固定されていく
ただし、この作品は倉庫番型であり、そこから完全には脱却していないということだけは念頭に置いて置かなければ行けない。
このゲームはかなりの数のステージがあるが、ステージが進むにつれて難易度を上げるために、条件付けをいじることが出来なくなっているという問題が発生する。
自由度が高いからこのゲームは好きという評価があるが、私個人的にはそれを否定する。
自由度が高いのはごくごく最初なだけで、後々には自由度は狭まれていくからだ。
何を持って自由度の高さを評価するのかと言われれば賛否両論はあるが、答えに行き着くまでの過程が一つではないのがパズルゲームにおける自由度の高さであるとするなら、このゲームは後々は自由度が下がるゲームであると言わざるを得ない。
難易度を上げるためには答えを絞る必要があるため、コラテラル・ダメージである。
かといって、パズルゲームに自由度はそこまで必要が無いんじゃないかとも思う。
もしコナン君が「いや、もしかしたら犯人はこの手を使ったかも…いやこの手を使ったの?」と最後の説得のときにあやふやだったら、真実はいつもひとつ!とドヤ顔で話せないだろう。
推理物とロジックパズルを一緒にするのもどうかとは思うが、ある種の説得力を持たせるならやはり過程を狭めていくのも必要だろう。
Baba Is Youは自由度の高さを評価するゲームではなく、探りに探りを入れて、過程を考え、唯一の突破口を見つける。
そういった推理もののパズルゲームであると私は思う。
私はパズルゲームはあまり得意ではないほうだが、こういった発想の転換や閃きを大事にするゲームは今後も増えていって欲しいと願う。
何よりBabaが結構カワイイのがポイントだ。
以上です。お疲れさまでした。